よみもの・連載

犬義なき闘い

序章

新堂冬樹Fuyuki Shindou

 時は二〇二八年。
 六年前に吹き荒れた新型殺人ウイルスの猛威は、世界中の人間を震撼(しんかん)させた。
 日本も例外ではなく、殺人ウイルスに未曾有の危機に陥った。
 中でも殺人ウイルスが蔓延(まんえん)した悪の根源とされているキャバクラやホストクラブがひしめく東京の新宿から地方へと、人間達は競うように逃げ出した。
 無人の街となって半年……新宿は人間から捨てられ野犬化した犬達が支配する街となっていた。
 この物語は、人間の愛情を失い本能と牙で生き抜かなければならなくなった元飼い犬達の血で血を洗う「犬義なき」天下取りの物語だ。

プロフィール

新堂冬樹(しんどう・ふゆき) 小説家。実業家。映画監督。98年に『血塗られた神話』で第7回メフィスト賞を受賞し、デビュー。“黒新堂”と呼ばれる暗黒小説から、“白新堂”と呼ばれる純愛小説まで幅広い作風が特徴。『無闇地獄』『カリスマ』『悪の華』『忘れ雪』『黒い太陽』『枕女王』など、著書多数。芸能プロダクション「新堂プロ」も経営し、その活動は多岐にわたる。

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