よみもの・連載

犬義なき闘い

第21回 警察犬ファミリー

新堂冬樹Fuyuki Shindou

 新宿警察署の刑事課のフロア。
「それにしてもよ、お前はどう思う?」
 スチールデスクの上で腹這(はらば)いになったサブボスのロットワイラーは、生のリブロースにむしゃぶりつきながら白狼犬に訊ねた。
「なにが?」
 床にお座りしていた特攻隊長の白狼犬が訊ね返した。
「どチビの作戦だ。大量の牛肉を餌にライブハウスに土佐犬野郎とピットブル野郎を誘き出し、袋の鼠にしたところで奇襲攻撃をかける。どうも引っかかるんだよな」
 ロットワイラーは首を捻(ひね)った。
「そんな単純な作戦で、あの二頭を仕留められるかという不安か?」
 白狼犬が、ロットワイラーに顔を向けた。
「不安なんか、あるわけねえだろうがっ。俺がいるかぎり、土佐犬野郎もピットブル野郎も屍になるだけだ」
 ロットワイラーは、大胆不敵に言い放った。
「じゃあ、なにが引っかかるんだ?」
「どチビだ」
「どチビ……チワワのことか?」
 白狼犬が、怪訝な顔で質問を重ねた。
「ああ、そうだ。あっちちょろちょろ、こっちちょろちょろ……あのどチビのことは、どうも信用できねえ! 逆に俺らを嵌(は)める作戦かもしれねえ」
 ロットワイラーは、疑心の表情で言った。
「それはないだろう」
 白狼犬が、ロットワイラーの危惧を否定した。
「どうして、そう言い切れるんだ!?」
 すかさず、ロットワイラーは訊ねた。
「チワワは、愛玩犬ファミリーを潰された上に土佐犬組長やピットブル特攻隊長に奴隷のような扱いを受け、相当に根に持っている」
「闘犬野郎のことが怖くて、従ってるかもしれねえだろ! 万が一罠(わな)だったら、どうするつもりだ!」
 ロットワイラーが、白狼犬に怒声を浴びせた。
「あんたが疑う気持ちはわかるが、多少のリスクを冒さなければあの化け物たちを倒せない」

プロフィール

新堂冬樹(しんどう・ふゆき) 小説家。実業家。映画監督。98年に『血塗られた神話』で第7回メフィスト賞を受賞し、デビュー。“黒新堂”と呼ばれる暗黒小説から、“白新堂”と呼ばれる純愛小説まで幅広い作風が特徴。『無闇地獄』『カリスマ』『悪の華』『忘れ雪』『黒い太陽』『枕女王』など、著書多数。芸能プロダクション「新堂プロ」も経営し、その活動は多岐にわたる。

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